会津戦争における悲劇として、少年兵士たちから成る白虎隊の自決は非常に有名です。どのような経緯でその「白虎隊の悲劇」が起こることになってしまったのでしょうか。
今回の記事では、そんな白虎隊の全体像や生き残り、若松城との関係や飯盛山などについて解説していきます。
当時の時代背景
幕府は会津藩と初代・保科正之の頃から深い関係にあり、会津藩は京都守護職として幕府に敵対する長州藩などの尊王攘夷派を取り締まる役を担っていました。
倒幕に向けて同盟を組んだ薩長両藩は、戊辰戦争の緒戦である鳥羽伏見の戦いで幕府軍を破ると、次の矛先として幕府と密な関係にあった会津藩を討とうとしたのです。
この西郷隆盛らが率いる新政府軍と会津藩・東北諸藩同盟軍との間に起こった戦いが会津戦争で、白虎隊含む多くの悲劇を産む争いとなりました。
白虎隊とは?その成り立ち
会津藩では、新政府軍との戦いに備えて軍隊の組織編成がされ、白虎隊は16~17歳の武家出身の男子340人から成る組織でした。
白虎隊の由来となっている「白虎」とは、中国古来より守護神として伝わる架空の動物であり、幕府を守ろうとする会津藩の心情が伝わってくる命名となっています。
しかし、白虎隊の火器装備は新政府軍に著しく劣り、火縄銃よりマシというレベルのものでした。
また、会津藩の軍制編成では、白虎隊の他にも年齢別に組織分けがされており、いずれも守護神の名を持つ四神を由来とする名称となっています。
- 白虎隊…16~17歳の武家男子で構成。予備隊。
- 朱雀隊…18~35歳の武家男子で構成。主力となる実戦部隊。
- 青龍隊…36~49歳の武家男子で構成。国境予備隊。
- 玄武隊…50歳以上の武家男子で構成。予備隊。
白虎隊の悲劇
本来、予備隊として城下防衛に当たっていた白虎隊でしたが、戦況は劣勢を極めており、やむを得ず各所に白虎隊を投入することに決めました。
もはや状況を好転させることは不可能だと誰もが分かっていながらも、皆、玉砕覚悟だったようです。これが、「白虎隊の悲劇」に繋がります。
戸ノ口原の戦いで敗走
各所で白虎隊も奮闘しましたが、不利な状況は変わらず、一番隊は会津藩主・松平容保を護衛するために待機し、二番隊は防備が手薄だった戸ノ口原へ派遣され、新政府軍と銃撃戦を繰り広げました。
この戸ノ口原の戦いでは、身軽さを優先して食料を持ってきていなかったことと、夜に雨が降っていたために、白虎隊の少年たちは空腹と寒さで疲れ果てていたと言います。
そして新政府軍からの逆襲を受け、敗走することになりました。
白虎隊の一部が飯盛山へ
リーダーの篠田儀三郎率いる白虎隊20人は、飯盛山に逃げ落ちました。
飯盛山は福島県会津若松市の中心から少し離れたところにある標高314mの小高い山で、ご飯を持ったような形から、その名前が付けられたそうです。
この飯盛山には会津若松が一望できる高台があり、そこで白虎隊の少年たちが見た光景は絶望的なものでした。
若松城が燃え落ちたと勘違い?
彼らは若松城の天守閣が燃えているような光景を目にしました。
しかし、実際には城下が燃えていたのを、天守閣が燃えていると勘違いしたようです。飯盛山から城へは3kmほど離れていたため、正確な状況が把握できなかったのでしょう。
白虎隊20名が自刃
城が陥落し、もはやここまでと覚悟を決めた白虎隊20名は、自刃していまいます。藩のために戦い、若くして亡くなったその悲壮な出来事は、「白虎隊の悲劇」として後世に語り継がれることとなりました。
今でも、白虎隊を偲んで飯盛山を訪れる人は後を絶たないと言います。
白虎隊の生き残り、飯沼貞吉
実は、飯盛山で自刃した20人のうち、1人だけ助かり、生き残っています。
それが飯沼貞吉という人物で、死に切れずに呻いているところを、通りがかった顔見知りの人に助けられたと言います。
飯沼貞吉は会津戦争後、通信技師として各地に勤務し、日清戦争にも従軍しています。
最終的には陸軍大尉になり、1931年、77歳で亡くなります。没後は飯盛山にある仲間の墓のそばに埋められました。
飯沼貞吉は白虎隊の生き残りとして、自刃を試みたときに死に切れなかった自分を恥じており、白虎隊に関してあまり多くを語ることはなかったようです。
東北の名城・若松城
白虎隊の少年たちが、天守閣が燃えていると誤認した若松城ですが、戊辰戦争で砲弾2500発を打たれても落城せず、板垣退助が薩摩の援軍を頼んでも落としきれないで、1ヶ月の猛攻を耐え忍んだ東北屈指の名城です。
地元の福島県会津若松では「鶴ヶ城」と呼ばれています。
さいごに
幕末の出来事として人々の心に強く残った「白虎隊の悲劇」について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
最終的には、会津戦争によって、300人ほどいた白虎隊のうち、50人が戦死・自刃しています。
会津藩の全総力を決して新政府に挑んだ姿が思い浮かばれ、なんともいたたまれない気持ちになりますね。